3Dプリンター出力での部品加工のコストの主な内訳は、材料費と加工費です。
加工費は造形時間に基づいて算出されます。一般的な造形時間の認識は、造形スタートのボタンを押してから造形が完了するまでの時間です。これは材料サイズ、体積、積層ピッチからスライサーソフトにより自動算出された数値です。しかし、実際には造形スタートボタンを押してすぐに造形が始まるわけではありません。
また、造形後にすぐに製品として使える状態でもありません。造形の前後にはシミュレーションソフトでは計算されていない工程があります。超短納期での部品製作を依頼する場面や、見積金額の根拠を考える場面で、これらの工程があることを理解しておくことで、段取りの役に立ちます。
例えばFDM方式の3Dプリンターでは造形までにベッドレベルの調整、ノズル、ベッド、チャンバーなどの加熱、パージの工程があります。気温の低い時期だと加熱に時間がかかり、造形開始までに1時間近くかかる場合もあります。
ベッドレベルの調整
ノズルに対して適正な高さ、水平方向かをチェックします。機械によって自動で調整してくれるもの、手動で調整が必要なものなどさまざまです。
加熱
ノズル、ベッドの加熱、もしくはチャンバー(造形ベッド、ノズルを囲む空間)内の加熱をします。材料はフィラメントと呼ばれる固体の状態であるため、200℃近い温度まで加熱し溶かしてから造形します。また、ベッドの温度が低いと射出されてもすぐに固まってしまい、うまく積層できません。冷める速度を遅らせるためにベッドやチャンバー自体を温める機械もあります。これらの部品が十分に温まってから材料が射出されます。
パージ
ノズルには直前に使用した材料が残っていることがあります。この古い材料は湿気を多く含み、造形不良の原因になるためノズルから吐き出して、新しい材料に取り換えます。この作業をパージと呼びます。
サポート材除去
造形完了時点ではサポート材が付いた状態になっているため、サポート材除去の作業が必要です。これは造形方式や使用するサポート材、形状によりかかる時間が異なります。