
3Dプリンター出力と切削加工はともに大量生産よりも多品種小ロットの生産に向いており、試作や小ロットの製品部品の製造に用いられることが多い加工方法です。この2つにはそれぞれ特徴があり、得意な部分と苦手な部分があります。そのためどちらが優れた方法かは一概に結論づけることはできません。加工内容や目的、用途によってうまく使い分けていくことで、より効率的なものづくりができるようになります。
この記事では両者の違いと、3Dプリンター出力が適している場面を紹介します。
切削加工とは、金属や樹脂などの材料を主に工作機械を用いて削ったり穴を開けて加工する加工技術のことです。材料から不要な部分を取り除く加工であることから除去加工(サブトラクティブマニュファクチャリング)と呼ばれることもあります。大きく分けると直線切削と回転切削の2種類あります。前者は加工物を高速回転させ、工具を直線的にあてて形状を作っていく加工で、後者は回転する工具を加工物にあてて表面を削る加工です。切削加工の代表的な特徴は以下の3つです。
1/1000台の精度のような高精度の加工ができます。寸法精度だけでなく面粗度も用途に合わせて調整可能です。精度が高いので別の部品との嵌合確認をする目的での製作もできます。
3Dプリンター出力の場合はフィラメントやレジンといった専用の素材が必要で、溶解させる紫外線で硬化させるという加工性質上、取り扱える材料に制限があります。
切削加工の場合は適切な機械・工具・加工条件を選定すれば、金属や樹脂、木材の中で幅広い材質の加工ができます。
金属と樹脂の切削加工材料については下記ページをご参考ください。
金属切削素材一覧(当社金属加工事業部サイト)
樹脂切削素材一覧(当社コーポレートサイト)
切削加工には機械そのものが動く加工時間以外にも、材料の準備から機械のプログラミング、刃物の手配・セットなど段取りにも時間がかかります。それらの加工にかかる時間は加工コストとなり、加工難易度の高いものほどそのコストが高くなります。
また、丸材や板材などの決まった形状の材料から削り出す加工をするため、完成形の形状によっては削る量が多くなります。材料代は完成形の体積で決まるのではなく、それを加工するために用いた元々の材料の費用で決まります。削りカスになった廃棄物の分も材料代が乗っていることになるので割高になります。
3Dデータがあればすぐに造形を開始できるので、完成までの期間が短い傾向にあります。切削加工は加工のための用意の時間もかかりますが、3Dプリンター出力の場合はこれらの準備にかかる時間がほとんどありません。また、加工時間自体も短く済む場合もあり、トータルで見た時に切削加工で1週間のものが3Dプリンター出力で翌々日出荷まで短縮できることもあります。
これは3Dデータが支給される場合の比較です。データ作成から依頼いただく場合は納期は+0~1日程度変わります。
切削加工では刃物が届かない箇所は加工することが出来ませんが、3Dプリンター出力にはその制限はありません。特に下の画像のような中空構造は3Dプリンター出力の強みで、内部構造も変えられるのでさらなる軽量化も可能です。
形状自由度の高さからDfAMとの相性にも優れています。
DfAMについてはこちら
「アディティブマニュファクチャリングとは?|特徴を解説」
一般的な工業用3Dプリンターの寸法の誤差は0.2mm程度あり、形状によってはそれ以上になることもあります。その他にも小径ネジの造形が難しい、表面に積層やサポートの跡が残る、真円にならないなど加工精度は高いとはいえない部分もあります。ただ、造形後に切削加工による追加工でH7(±0.01㎜)公差の穴あけや、高精度のネジ穴を実現でき、ある程度の欠点はカバーできます。
DDD FACTORYでは、造形物の切削加工による仕上げ加工にも対応しています。対応可能な仕上げ加工については「仕上げ加工について」をご覧ください。
切削加工 | 3Dプリンター出力 | |
精度 | ◎ | △ |
納期 | ○ | ◎ |
コスト | △ | ○ |
形状自由度 | ○ | ◎ |
対応材料の幅 | ◎ | × |
中空構造やオーバーハング形状、造形物の中にさらに造形物がある形状は3Dプリンター出力が向いている形状です。これらは切削加工時に刃物が届きにくい代表的な形状です。加工困難であるため加工不可になる場合や、できても加工費が高くなります。
径に対して深い穴も刃物が届かなかったり刃物が振って精度が出なかったりするため3Dプリンター出力向きの形状です。
本来であれば複数の部品が組み合って動く構造の造形物も一度に出力できます。組み立てが不要で、特に試作の段階で早いサイクルでの検証が可能になります。
ゴムの様なエラストマ素材は切削で形にするのが難しく切断程度の加工しか出来ません。3DプリンターはPolyFlexのような熱可塑性エラストマ材料が扱えるので軟質素材を使ったカバーのような形状も出力が可能です。
3Dプリンターでは内部の充填率を調整したり内部構造をラティス構造やハニカム構造にしたりすることで軽量化することができます。DfAMによって設計された従来にない自由曲線が多い形状にも対応します。下記の表は代表的な内部の充填パターンです。強度や重量を調整できます。
Rectangular Fill | ![]() |
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直線で塗りつぶすように充填する方法です。 最も密度の高い方法で、中身を完全に埋めてしまうこともできます。 縦横方向にも積層方向にも強い造形が可能ですが、もっとも重くなります。 |
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Triangular Fill | ![]() |
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三角形を並べた形状に充填する方法です。 充填割合を下げると三角形が小さく、充填割合を上げると三角形が大きくなります。 比較的軽量で縦横方向からの力に強いのが特徴です。 |
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Hexagonal Fill | ![]() |
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ハニカム構造に充填する方法です。 上記の三角形と同様に、六角形が大きくなると充填率も下がります。 最も軽量な造形が可能です。 積層方向の力に大変強く、縦横方向には変形しやすい充填方法です。 |
3Dデータを変更すればすぐに造形出来るので実物を確認しながら調整しつつ設計したい場合に有効です。
DDD FACTORYの提供する3Dプリンター出力サービスは、樹脂・金属素材から最適な加工条件での部品製作をご提案させていただきます。データがあれば最短見積もり30分以内、最短当日出荷での対応が可能です。工場の状況などにより特急納期が不可の場合もありますが、試作・製作依頼先の候補として考えていただければ幸いです。
2D図面、現物からの製作も承ります。3Dデータを用意できない環境の方や手間を減らしたい方向けに、3Dデータ作成代行オプションもご用意しております。製品開発の試作、部品の製作は当社にお任せください。材料選定のご相談から対応しております。お気軽にご相談ください。