
3Dプリンター出力は、自動車やロボットのパーツの製作など、幅広い業界で活用されています。過酷な使用環境のため高い精度や強度が求められる宇宙航空業界でも、製作方法の1つとして選ばれることがあります。本記事では、宇宙業界の製品で必要な条件と、3Dプリンターで応える方法やメリットについて詳しく解説します。
宇宙部品には、人を乗せて安全に宇宙へ飛ばし、真空空間でも問題なく機能する必要があるため、高い精度や強度が求められます。ここでは、宇宙部品ならではの厳しい条件を3つご紹介します。
宇宙部品の製作では、樹脂を使用する場合、低アウトガス放出性を持った材質が条件となります。アウトガスとは、真空度が高く温度変化も激しい宇宙空間において、機械の材料から放出される微量のガスのことを指します。このアウトガスは、材料に含まれる水分や有機物が真空内空間で気化することによって発生します。
アウトガスが部品に付着すると、汚染(コンタミネーション)を引き起こすことがあります。電子部品では、絶縁不良などの故障につながり、光学部品では、性能低下につながることがあります。さらに、機械からのアウトガスが原因で、機械の汚染だけでなく宇宙空間も汚染されることもあります。このような機械や宇宙空間の汚染を防止するため、使用する材料には低アウトガス放出性が必要となります。
ロケットや人工衛星などの発射時は、激しい振動が起きます。その際に、部品の表面に粗さや傷が残っていると、他の部品と擦れた際に切粉が出ます。この部品から出た切粉は、アウトガスと同様に機械に付着すると絶縁不良などの故障を引き起こす可能性があります。そのため表面に粗さがなく、バリ、カエリを完全に除去する必要があります。
宇宙部品の製作には、過酷な環境で使用するため、特定の難燃性や耐久性を満たす材質が求められます。そのため、アメリカ国防総省が定めたMIL規格や、航空宇宙機器の分野で適用されているAMS規格などを取得した材質が使用されます。また、材質が取得している規格や実施した検査内容について、証明書の発行が必要になる場合もあります。
現在宇宙部品は、精度の高さや使用できる材質の種類の多さから切削加工による製作が中心です。一方で、切削加工では困難な形状では、3Dプリンター出力が活用されています。ここでは、3Dプリンターで宇宙部品を製作するメリットをご紹介します。
3Dプリンター出力では、材料を積み重ねるという製作方法のため、切削加工では不可能な複雑形状も製作できます。特に、湾曲したパイプ状のものや、画像のように一部が突出した形状は3Dプリンター出力が適しています。
宇宙へ物資を運ぶには、サイズ制限があり、1kgあたり約100万円のコストが発生するといわれています。そのため、宇宙部品には強度と合わせて軽量化も必要となります。切削加工では、部品自体に可能な限りの肉抜きで軽量化を図りますが、3Dプリンター出力では内部に隙間があるスパース構造や密度(充填率)の調整ができるため、より柔軟に軽量化することができます。
宇宙部品を3Dプリンターで製作する場合には、厳しい条件を満たす必要があります。ここでは宇宙部品を3Dプリンター出力で製作する代表的な方法を、2つご紹介します。
金属3Dプリンターとは、粉末状の金属にレーザーを照射して焼結することで立体物を製作する機械です。宇宙部品は強度が必要であり、基本的に金属で製作されるため、宇宙業界では金属3Dプリンターが活用されています。焼結方式は結合力が高く、FDM方式などの他の造形方式と比較して、より強度の高い造形が可能です。
粉末を使用するという特性上、造形後の表面はザラつきが残ります。しかし、宇宙部品では表面仕上がりも機械の汚染や故障につながる可能性があります。そこで、造形後に切削加工にて表面を研磨することによって、このザラつきを除去します。
内部を切削加工にて研磨した状態。
左側は仕上げ前の状態。右側は切削加工にて研磨しており、ザラつきが除去されている。
3Dプリンターで使用できる樹脂材質には、宇宙部品に適した性質を持つものがあります。
低アウトガス放出性や、優れた強度を持つ2種類の材質をご紹介します。
PEKKは、プラスチック切削材の中でも優れた性能を持つPEEKと似た構造を持つ3Dプリンター材質です。高い強度・耐摩耗性・耐薬品性を持ちます。また、宇宙部品に必要な低アウトガス放出性を持っています。米ボーイング社が認証しており、航空業界でも活用されています。
FDM方式の3Dプリンター材質の中で、最も高い耐熱性(耐熱温度約216℃)を持っており、耐薬品性にも優れています。PEKK同様、低アウトガス放出性を持っています。
民間航空機部品の使用認可(FAR25.853)も下りている材質です。
PEKKとULTEMは、FDM方式の3Dプリンターで使用できるため、形状の自由度が高く、内部構造の調整によって軽量化も可能です。
人や物資を安全に宇宙へ送り、宇宙空間でもトラブルなく作動する必要がある宇宙部品には、厳しい精度や強度だけでなく、低アウトガス放出性といった独特の条件があります。3Dプリンター出力で宇宙部品を製作する場合、金属3Dプリンターや高機能材質であるPEKKやULTEMを活用します。DDD FACTORYでは、幅広い造形方式や材質に対応していますので、ぜひご相談ください。
宇宙業界専門サイトはこちら→ 宇宙機器・ロケット部品加工|Stella Mechanics
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